会長挨拶

第31回日本病態プロテアーゼ学会学術集会開催にあたって

 この度、第31回日本病態プロテアーゼ学会学術集会開催を仰せつかりました滋賀医科大学の西英一郎と申します。本学会は、前身の「病態と治療におけるプロテアーゼとインヒビター研究会」(1995年、第1回)より毎年開催されており、2009年に現在の「日本病態プロテアーゼ学会」へと改称されました。当初より、基礎医学、臨床医学、企業の研究者が、プロテアーゼに関連する研究について胸襟を開いて討論できる、我が国では数少ない場として有効活用されてきました。この経緯をふまえ、本学術集会のテーマは、「プロテアーゼのとっておきの話をしよう」としました。
 私自身がプロテアーゼ研究に足を踏み入れたのは、留学中に目的タンパク質を同定してみたら、それがプロテアーゼだったという偶然から始まりました。それから30年近い年月が過ぎ、当初思いも寄らなかったことが色々と分かってきたものの、このタンパク質がプロテアーゼであることの意味など、まだまだ本質に迫れていない点も多くあります。その過程で、毎年本学会に参加させて頂き、多くの方と議論させて頂けたことが我々にとって計り知れない財産となっています。今回のテーマには、この学会に参加する皆さんが「とっておきの」話をして、熱い議論が産む化学反応によって、この研究分野が発展していきますように、という願いを込めました。
 今回の教育講演は、京都大学iPS研究所副所長(2026年4月より所長)江藤浩之先生にお願いしました。江藤先生は、巨核球からの血小板産生機構の分子機序解明、ヒトiPS細胞から効率よく血液細胞を誘導する方法の開発を進められ、2020年には世界初の血小板輸血不応症患者への自家iPS血小板輸血を完遂されています。血小板産生機構におけるプロテアーゼの働きも含め、基礎研究から臨床応用への道程をお話いただきます。また特別講演は、大阪大学免疫学フロンティア研究センター 微生物病研究所 免疫化学分野教授 荒瀬尚先生にお願いしました。荒瀬先生は免疫システムの制御機構、中でも抗原プロセシング不全によって生じる「ネオセルフ抗原」の提示が、全身性エリテマトーデスなどの自己免疫疾患の原因になるという新たな概念を提唱されています。さらにシンポジウム、ワークショップでも、プロテアーゼと様々な病態生理、プロテアーゼを標的とする臨床応用に関するテーマを第一線でご活躍の先生方にお話いただきます。
 学術集会の会場は、滋賀医科大学(滋賀県大津市月ノ輪町)を予定しております。京都、大阪にお越しになる機会は多いと思いますが、この機会に、近江商人や街道文化に象徴される滋賀の歴史、そして琵琶湖の恵みを生かした食文化にも触れていただければ幸いです。
皆さまと湖国の地でお目にかかれることを心より楽しみにしております。

第31回日本病態プロテアーゼ学会 学術集会長
西 英一郎 
(滋賀医科大学医学部医学科 薬理学講座 教授)